しかし、オオスズメバチの来襲は止まない。飛来するオオスズメバチの行動を見ていると、まず巣箱の周囲を一巡してから、防御用のトリカルネットの特定の場所へ止まる。
飛来するオオスズメバチはどれもほぼ同じ場所にとまる
オオスズメバチは餌場(ミツバチの巣)を見つけると何回か飛来したのちに、確実な餌場についてはファンデルフェヒト腺フェロモンを腹部体節末端の腹側から噴射してマーキングする(ミツバチのナサノフ腺フェロモンと類似の働きをする)。すると、そのフェロモンが仲間を呼び寄せて集団攻撃が開始される。通常、単独で飛来したオオスズメバチは人が近づいても攻撃してくることはない。しかし、いったんその場所がマーキングされると、自分の巣に対するのと同様に接近するものに攻撃反応を示すようになる。だから、ミツバチの巣箱に数匹のオオスズメバチが集まって行動しているときは、うっかり近づくと危険だ。
同じ場所にオオスズメバチが止まるというのは、留守のあいだに、わがニホンミツバチの巣はすでにマーキングが終わった証左となる。だから、巣内にハチはいなくてもオオスズメバチは執拗に飛来する。巣箱の脇に置いた粘着トラップはすでに満杯になっていて、すぐに交換したが、たちまちこのありさまになった。
雑談
ニホンミツバチはスズメバチに対していくつかの防御行動をとる。なかでも最近、こんな行動が報告されている。
「最初に斥候としてやってくるオオスズメバチが去った直後に、ニホンミツバチが植物から齧り取ってきた葉や芽、花弁を巣の入り口に塗る付けること、さらにその植物の情報を迅速に伝えるために、普段は踊らないはずの入り口で、ダンスを踊ることを発見しました。他のキイロスズメバチやコガタスズメバチではこれらの行動は確認されず、オオスズメバチに対する特異的な防御行動であると考えています」。『日本みつばちの会だより』2017年5月号の「藤原愛弓氏 講演要旨」より。
固定的と思われる天敵に対する防御反応にもこうした進化らしい行動の変化が現れるのだろうか、あるいはたんにこれまで気づかなかっただけか。
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