長雨が続いてひさびさに日射しを見たようなときは、空腹のスズメバチらが大挙して巣箱に押し寄せる可能性が大きい。昨日はまさにそんな日。
プロジェクトの活動から帰宅してすぐにセイヨウミツバチの巣箱に向かったが、ちかごろ珍しいほど盛大な時騒ぎの最中で、ハチたちもひさびさの太陽を享受しているようだった。
ついで、ニホンミツバチの巣箱を訪れると、遠目にもオオスズメバチが5~6匹ほど、トリカルネットにたかって巣門をうかがっているのが分かった。巣箱の周囲は不気味に徘徊するオオスズメを除いて森閑としている。
洋バチの場合、オオスズメがこれほど巣門に集まれば、巣箱の周囲は飛び回る夥しい数のハチで大騒動になり、つぎつぎに屠られたハチの死骸が巣門の周囲に山となる。
和バチの場合は、それとは逆で、全員が巣内に引きこもり臨戦態勢を取る。もしも、巣門を食い破ってオオスズメが侵入すれば、ハチ団子となってオオスズメを熱殺する(圧迫して腹部の呼吸を止め窒息しさせることも併用するとか)。
(ここで写真を撮らなかったのが焦っている証拠。)すぐに、巣箱の脇に掛けてあるバトミントンラケットで集まっているオオスズメをネットに擦り潰すようにした。叩きつけたほうが簡単だが、飛べない状態で活かしておきたい魂胆がこちらにはある。
それで3匹ほどは巣の脇に落ちたが、逃れた残りが、襲撃目標をこちらに転じた。あわてて手にしたラケットを振り回して防戦する。なんとか叩き落とすことができたが、もしラケットを持っていなかったら、いまごろどうなっていたことか。
こちらには、洋バチが襲われたときの体験から、オオスズメが人は襲撃しないという思い込みがあった。しかし、和バチは巣内に籠もってしまうので、その場にはオオスズメとそれを攻撃してきた人間しかいない。洋バチのように夥しく飛び回りオオスズメの注意を分散させる目標もない。
この場合、彼女らは自己防御のために人の反撃に転じたのだ。たぶん、1、2匹だったら反撃には至らないかもしれないが、すでに5匹も集まっていたことから、集団として状況判断を下したこともあろう。とにかく、かろうじて難を逃れた。
これまで和バチの巣は、巣門にトリカルネットの防御網を付けただけだったが、今後は粘着トラップを併用する。さっそく粘着トラップを屋根の上に置き、まだ生きているオオスズメを載せた。
昼前
オオスズメを生きたままにしておくことがポイント。半死の彼女らが必死に発する集合フェロモン(ナサノフ腺フェロモン)が新たに来襲するオオスズメをこのトラップに惹き寄せる。
昼後 昼食のあいだに捕捉されたオオスズメバチの数が増える
5時ころ さらに増えていた
翌朝、巣箱の周囲をオオスズメが1匹徘徊していたので、これを叩き落として、トラップに追加する。それ以前に、すでに2匹がうごめいていた。
昨日の昼前から今朝までに捕まったオオスズメバチ
一晩経っても、巣箱に周りにこれといった変化はなく、死骸1匹も見当たらない。和バチたちは、なにごともなかったかのように防御ネットをかいくぐって出入りしていた。
セイヨウミツバチが人間の保護なくして日本の自然環境では生きのびられないという理由が納得できる事件だった。