2016年1月28日木曜日

No title

Warre巣箱がほぼ完成した。

木材をどうするか一番悩んだところだが、山口の「ゆのき農林業」がヤフオクに出しているショップを見つけた。ここは、ミツバチの巣箱用にさまざまな木材を出品している。Warre巣箱は標準的には20mm厚の木材で作るが、35mm厚で用意できるか寸法を書いて問い合わせてみたところ、素早い応答があった。手元に用材があったので、切ってみたという。え! まだ注文すると決めていないのに切っちゃったって? 実際、ヤフオクのサイトを見ると、写真入りでもうオークションに出ていたのだ。これには驚いた。うれしい愕きってやつだ。もちろん早速落札した。

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35mm厚で内側が300mm四方になる寸法の杉材

慣れないトリマーの設定に苦労しながら、上桟を掛ける顎を切削する。

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トリマーで上桟を掛ける顎を切削する10x10mmの顎

顎ができたら箱を組み立てる。ただネジ止めするだけだが、ここで板の裏表に注意する必要がある。これは、京都ニホンミツバチ週末養蜂会のサイトで知ったのだが、材の芯側を箱の外側にすると木の反りを少なくできるのだそうだ。

顎に上桟の間隔に合わせて真鍮の釘を打ち、釘の頭をニッパーでカットする。上桟の両端中央を切り欠き、そこに釘を通す。釘により上桟の位置が決まる。これはヘフがYouTubeで紹介している手法だ。

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上桟の間隔に合わせて真鍮の釘を打つ釘の頭をカット

24x9mmの上桟を8本、各巣箱に差し渡す。ラングストロース式巣箱などのような巣枠や巣脾を使わず、上桟だけでハチの巣作りを誘導する養蜂を「トップ・バー式」と総称している。もちろんWarreはトップ・バーの一員である。

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24x9mmの上桟8本

上桟の材はあまりが出るので、それを相欠きで接いでムダにしない。

箱と上桟ができると、あとは土台となる底板と巣門、それに上部を覆う屋根だ。

まずは、底板と巣門。底板は21mm厚の板を使った。幅24mmでは足りないので木工ボンドで貼り合わせる。巣門にはだいぶ苦労した。Warreのオリジナルサイズだと、開口部が広くなりすぎる。海外ではいざしらず、日本ではオオスズメバチなどの襲撃に対してあまりに無防備になる。ここは、巣門の奥の斜路の上端と巣箱の前面の板の間に8mmのスペースが空くようにカットした。材の末端からではなく、途中から切り始めるので、一苦労である。まあ、ひどいできだが、なんとかできた。

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21mm厚で240mm幅の板を貼り合わせる巣門の部分

巣箱の最上段には「キルト」を置く。キルトは巣箱にぴったりと乗るサイズの木のマスで、その底に布を張り、上端は解放されている。そこへ木くずやワラなどの断熱・吸湿材を入た座布団のようなものを入れる。ふつうキルトは、羽毛などのキルティングに使う縫製品のことだが、Warreではクッションのような意味で使っている(キルトの写真は後出)。

さらにキルトの上に切妻の屋根を掛ける。これは日光の直射や降水の直撃を防ぐためだ。この屋根が、不器用な素人細工には難関であった。

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材を切りそろえる屋根を掛ける前 上面に見えるのは中蓋

試行錯誤でためらい傷だらけのありさまだが、なんとか切妻屋根ができあがった。

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なんとか組み上がる屋根と中蓋の間は吹き抜け

さて、組み合わせてみよう。底板を置き、巣箱を積み重ねる。底板は巣箱の外側から2mmほど小さくなっている。これはWarreのアイデアで、降水が巣箱内に入り込まないための工夫だ。

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底板と離着板巣箱を積む

底板の上に巣箱を重ねる。このあたりは、ニホンミツバチの重箱式とまったく同じ。なお、巣箱にまだ把手を取り付けていない。今回、巣箱は4つ作ったので、それをすべて重ね、最上段の巣箱の上にキルトを置く。

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巣箱4つの上にキルト

キルトの上から屋根を被せる。屋根の中蓋がキルトの上に載って、屋根の裾の部分は巣箱の上端を覆うことになる。

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Warre式巣箱

まだ、台座やキルトの中身はできていないが、これでほぼWarre巣箱が完成した。

なんでわざわざ面倒な切妻屋根にするのか?  これについては議論があり、ヘフもWarreの改良版としてフラットな屋根の巣箱を試みている。最初は当方もそう思ったのだが、まずはオリジナルに忠実に作ってみた。

今後、いまラングストロース式巣箱で育てている5枠のコロニーを、Warre式巣箱へ引っ越しさせる作業が必要になる。その場合、みつばちプロジェクトの先輩から頂戴した8枠の巣箱が活躍する予定だ。それについては、また別に取り上げよう。

追記
偶然、まったく同じ方法でラ式→Warre式の移行をすでに実践しているサイト「Warre Hive へ移行」があった。

シュウ酸溶液の濃度と処置量

シュウ酸滴下によりバロア対策を行う場合、シュウ酸溶液の濃度と処置量をどう決めるか、これまで調べたことをメモしておく。濃度の計算については、「シュウ酸溶液の濃度計算」参照。

処置する濃度は?

ScientificBeekeeping.comのシュウ酸処置表(仮にオリバー表)では、低、中、高(2.5%、3.2%、4.2%)の3レベルの濃度(V:W)について使用するシュウ酸二水和物、砂糖、水の量を示している。米国以外のサイトを見てもだいたいこのくらいの濃度を使用しているようだ。

検索にかかっためぼしいサイトを挙げてみる。

下記の2サイトでは、濃度3.2%のシュウ酸溶液(シュウ酸二水和物75g、水1000ml、砂糖1000g)を使用している。

●ニュージーランド
http://www.biosecurity.govt.nz/files/pests/varroa/control-of-varroa-guide.pdf
��農業・林業省『CONTROL OF VARROA A Guide for New Zealand Beekeepers』)

●アイルランド
http://www.dave-cushman.net/bee/wallyshaw.html
��故人デビッド・クッシュマン氏の個人サイトだがミツバチの情報を百科事典的に網羅している)

次のサイトは、濃度は明示していないが、シュウ酸二水和物35g、水1000ml、砂糖1000gという慎重な値を推奨している。

●IBRA(1999年にスイスで行われた試験に基づいて中央ヨーロッパの温暖な地域と限定)
http://www.dargbees.org.uk/Oxalic%20Charriere_Bee%20World.pdf
��IBRAという国際的なハチの研究団体の資料)

とりあえずここでは、濃度3.2%(V:W)を使用することとして話を進める。

処置する量は?

処置量はハチの数で決まると考えるのが自然だろう。オリバー氏に限らず多くの場合、1シーム当たりに滴下する量とシーム数によって使用するシュウ酸溶液の量を決めている。シームは巣枠と巣枠のあいだの空間の意味だ。そこにいるハチの数が問題なのだから、巣箱に接する両端を合わせて1シーム分のハチがいると考えれば、巣箱のシーム数は巣枠数とほぼ同じと見なすことができる。

当然、処置するときは、ほとんどのハチが巣内にいることを想定しているはずだ。シュウ酸処置は、冬季のハチの不活発な期間に行われることが最適なので、この条件はおのずと満たされていることになるか。

また、シームといっても巣箱のサイズや構造で、シームにいるハチの数も変わる。多くの資料ではラングストロース式巣箱の巣枠を前提としているが、資料を読むときは巣箱の条件もチェックする必要があるだろう。

オリバー表は特に明記していないが、状況的にラングストロース式巣箱を使用しているので、それを前提として1シーム当たりの処置量を5mlとしている。(ScientificBeekeeping.comでも古いページには3~5mlとしているカ所もある)

 処置に必要なシュウ酸溶液 = 巣枠数*5ml

シュウ酸溶液の作り方

ここでシュウ酸溶液とは、重量比1:1の砂糖と水の溶液にシュウ酸を溶かしたものだが、手順としては、水(湯)にシュウ酸を溶かしてから、砂糖を溶かしたほうが作りやすい。

シュウ酸溶液の濃度は3.2%(W:V)とする。 ただし、W(g)、V(ml)

シュウ酸重量 = シュウ酸濃度*水の体積*(1.62/71.4) = 3.2*水の体積*(1.62/71.4)

上の式で、「水の体積*1.62」は「処置に必要なシュウ酸溶液の体積」になるから、使用するシュウ酸の重量は下式で計算できる。

 シュウ酸重量 = (3.2*処置に必要なシュウ酸溶液の体積)/71.4

例 ラ式巣箱に3.2%のシュウ酸溶液を処置する場合

日本ではラ式の巣箱はほとんど9枠で運用しているから、1箱に使用する溶液の量は 9*5 = 45ml となる。 

水の量 45/1.62 = 27.8ml

シュウ酸量 = (3.2*45)/71.4 = 2.02g

これで、水、砂糖、シュウ酸の量が決まった。

いま使っている注射器では27.8gをきっちり吸い上げるのは無理なので28mlほどとする。砂糖もどうように28gほど。シュウ酸の量は微妙だが、0.1gまで量れる秤なら2.0gでよいだろう。

(1)ガラス容器を60℃くらいに湯煎しておく。(前回はステンレスのボールを使ったがシュウ酸と反応するらしくシミが残ったので止めた。)
(2)湯煎の湯を流用し、注射器で28mlほど吸い上げてガラス容器に移す。
(3)ガラス容器に2gのシュウ酸を入れて溶かす。
(4)シュウ酸が溶けたところでさらに28gほどの砂糖を入れて溶かす。
(5)最後にガラス容器の溶液を注射器で吸い上げると、ほぼ45mlのシュウ酸溶液で注射器が満たされる。
(6)シュウ酸溶液の入った注射器は保温のため湯に入れたガラス容器の中に置いたまま巣箱に運び、手で触れても熱くない温度で投与する。

巣箱の多い場合は、巣箱数分の溶液を一度に作っておき、注射器で計りながら滴下することになるだろうね。

2016年1月24日日曜日

シュウ酸溶液の濃度計算

シュウ酸濃度の計算

バロア対策としてのシュウ酸滴下法で使うシュウ酸溶液の作り方は、Randy Oliver氏の「ScientificBeekeeping.com 科学的養蜂」のサイトにある「シュウ酸処置表」(仮にオリバー表とする)を使用した。

確認のためにシュウ酸濃度(W:V%)を自分で計算してみたところ、だいぶ手こずったので、手順を記録しておく。

W:VのWはシュウ酸重量(g)、Vは水に砂糖を重量比1:1で溶かした液体の体積(ml)だ。

注意する点が2つある。
  • 表に示すシュウ酸の重量は一般的に入手できる二水和物の重量で表示してある。分子量の比(90.03:126.07)から二水和物中の純シュウ酸の重量比を計算すると71.4%になる。濃度計算には二水和物の重量を純粋のシュウ酸に換算した値をWとして使用する。(製品にはシュウ酸と水以外の不純物があるはずだが無視。)なお、オリバー氏のサイトでは、文中でこの比率を70%(7/10)と記しているカ所がある。
  • シュウ酸滴下法で使う溶液は水と砂糖を重量比1:1で混ぜる。この溶液の体積Vは水より増えるはずだが、これは計算ではだせない(理論的な算出方法はあるかもしれないが、知らない)。オリバー表で水1000mlを使う場合の数値を見ると、Vは水の体積の1.62倍になっているのでこの値を使うことにする。(実際には砂糖の製法で変わるはずで、正確を期すなら製品ごとにメスシリンダーで量るべきだろう。さらにいえば、水と砂糖の量に対してこの倍率が定数とみなせるのかも不明だが実用的には問題ないのだろう。)
つまり、「シュウ酸処置表」の濃度W:V%を自分で計算する場合、使用するシュウ酸重量を0.714倍し、溶液の体積(シュウ酸による増分は無視)を水の1.62倍としてW:V%を計算する。

ある体積の水(ml)に同量の砂糖(g)を溶かし、そこにある重量のシュウ酸(g)を溶かした場合、その溶液のシュウ酸濃度(V:W%)は、次式となる。

シュウ酸濃度 = (シュウ酸重量*71.4)/(水の体積*1.62)

オリバー表と計算値(括弧内)を比較してみた。

          溶液のシュウ酸濃度とシュウ酸二水和物の重量
                       4.2%           3.2%               2.5%
    16.2ml        1(0.95)       0.75(0.73)     0.6(0.57)
1000   ml      60(58.8)     45(44.8)        35(35.01)
1620   ml    100(95.28)   75(72.59)      60(56.71)

オリバー表は数値がきれいに揃っているが、実際に使いやすいように適当に丸めたのではないか。条件が大雑把だから細かい誤差はでるが計算式もまあまあ使えそうだ。

蜂場でシュウ酸を処置する場合は、たとえば、標準的な10枠サイズのラングストロース式巣箱で飼っているセイヨウミツバチのコロニーだとすれば、どのくらいの濃度で、どのくらいのシュウ酸溶液を処置すればいいかを知りたいはずだ。

これについては、「シュウ酸溶液の濃度と処置量」で取り上げる。

2016年1月19日火曜日

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追記 2016/01/26
つらつら顧みるに、やはりというべきか、ハチにこれほど多くの被害をだしたのは、シュウ酸溶液の滴下量が多すぎたせいのようだ。当方のコロニーは5枠なのにどうも10枠分を処置したような気がしてきた。その日の午前中に、標準的な巣箱サイズの投与を前提にあれこれ処方を考えていたので、無意識にその量を作ってしまったのだと思う。初回の記述など見ると30mlほどとしているのに、3回目には50mlを処置したのではないか。

それにしても今回、多くの死バチが出たのはなぜか、こう考えてみた。寒さがまして、ハチの数が漸減し、以前よりもクラスター(蜂球)にハチが集中していた。実際に滴下する段になって、両側のシームにはあまりハチの姿がなかったので、中央部のシームにより量を増やして滴下した。そういえば、ひとわたり滴下し終わって、まだ溶液が注射器に残っていたので、もう一度中央部のシームに滴下しなおしながら、今日はすいぶん残っているなと感じた記憶がある。

やれやれ、ハチたちにはえらく過酷なことをしてしまって、申し訳なし。


��回目の処置をすべきかどうかだいぶ迷ったが1/15日に決行した。その理由は今年が暖冬だからだ。暖冬だとダニも生き残る可能性が高く、いま叩いておかないと春以降に急激の増殖する恐れがある。

翌日16日は早朝からみちばちプロジェクトの活動があったので、午後になって巣箱の外検をした。

巣門の前にはドキッとするほど多数のハチの死骸が横たわっていた。これほどの数を見るのは、10/19日にオオスズメバチの襲撃を受けていらいだ。

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まだ動いているものも多く、キエビネの霜除けの上に移した 

正常な成虫355匹、バロア症あるいは幼虫の状態で巣から出されたと思われるもの15匹。合計370匹。ふだんの外検では、あわせてもせいぜい30匹程度だ。

不思議だ。これまで2回の処置でこれほど多くの成虫が被害を受けたことはない。3回目の計量で目分量でもおよその見当はつくし、精度が高いとは思えないが、いちおう0.1gの計測ができる秤を使っている。シュウ酸濃度を間違えたとはわれながら考えにくい。

冬季でハチの体力が落ちていたのか、あるいは、これまで投与したシュウ酸が蓄積したのか。いろいろなサイトでシュウ酸処置についての事例は調べているが、これほどハチが被害を受ける報告は見たことがない。

ただ、救われるのはほかのハチたちがいたって元気なことだ。おびただしい死バチを仕分けしながらカウンターで計数していると、夏の時騒ぎのようにうるさいほどハチが飛び回っていた。

翌日の外検ではふつうの成虫15匹、異常な幼虫11匹で平常に戻った。ダニの死骸は16日が177匹、15日が44匹。2日の合計では2回目より少ないが、これはダニの総数が減少していると解釈できる。じゃなきゃ泣いちゃうよね。ははは。

最初からシュウ酸処置は3回で止めておこうと思ってはいたが、最後にハチの被害が急増するとは予想外だった。今後のダニ対策としては、暖かくなってラ式巣箱からWarre式へ移行するときに、粉糖処置をするつもりだ。

2016年1月18日月曜日

シュウ酸処置の根拠

EPA(アメリカ環境保護局)がバロア対策としてのシュウ酸処置を推奨しているのは、晩秋から早春の有蓋蜂児のもっとも少ない期間である。その理由は、バロアのライフサイクルにある。(『Final Registration Decision for Oxalic Acid』の「Application Methods and Labeling」)

パーデュー大学の市民講座『PARASITIC MITES OF HONEY BEES』のバロアの「Life cycle」によると、こうだ。
バロアのメスはハチの身体に付着して移動し、蓋が閉まる直前の巣房を見つけてその中に潜り込む。蓋の閉まった巣の中でメスは蛹の餌として蓄えられている溶液を摂取して生活し、1匹のオスと4匹程度のメスを産卵する。巣房のなかでこれらの卵が孵って成長して交尾が終わったころに蓋が開き、成熟したメスダニは巣房外のハチの成虫に付着して巣の中へ拡散する。バロアのライフサクルはこの繰返しになる。
冬季は女王が産卵を止めるので、巣から出だダニが棲み処を失う。それによって、バロワの数は冬を越すあいだに自然にコントロールされる仕組みになっている。(今年のように暖冬で女王が産卵を継続するとバロアも温存され、春以降、爆発的に増殖する可能性がある。)

シュウ酸処置が晩秋から早春が適期とされるのは、棲み場を失って彷徨するバロアを直撃できるからである。

冬季でオス蜂の幼虫はほぼいないとして、働きバチの蛹の期間は12日だから、女王を12日間隔離しておけば、有蓋蜂児のいない条件は満たされる。これまで当方が12日おきにシュウ酸を処置したのは、これが根拠だった。しかし、今年は女王の産卵が止まっているように見えないので、あまり意味がない。ぽり、ぽり。

2016年1月8日金曜日

Warre式養蜂の資料

追記 (4) Beekeeping: natural, simple and successful に加筆 2016/01/14
   (6) Hive Diagnostics by Katherine and Ruth Wite 追加 2016/02/25

ハチを飼いだしてまだ半年にもならない素人がおこがましいが、これまで参照したWarre式養蜂についての資料を紹介しておく。当方の英語力がプアーなせいで解読作業は遅々としており、誤解や理解の不十分なものもあるはず。その点はご容赦。

ここでは文字化けする可能性のあるアクサンを外して、「Warre」で統一することにした。ただし、オリジナルのサイトや原著等がWarréとなっているときはママとする。発音はアメリカのYouTubeなどでは「ウォーレ」と聞こえる。後出する英国人のDavid Heafなどはフランス風に「ワルレ」と言っているようだ(耳には自信がない。ぽり)。

(1)『Beekeeping for All』  Abbé Émile Warré

これがWarre式養蜂のバイブルだ。下記(2)のサイトが原典とするWarreの著作(英訳)でもある。Abbéは僧侶のこと。
無題

書籍としても入手できるが下記サイトからPDF版をダウンロードできる。
http://www.users.callnetuk.com/~heaf/beekeeping_for_all.pdf

本書の冒頭に、Warreの養蜂についての考え方が簡潔に述べられている。

「養蜂とは最小の出費で最大の見返りを得るためのミツバチの管理技術である」


いかにも実利いってんばりの表現に見えてしまうが、ラマルティーヌを引用した序文を眺めれば、Warreの根底にはハチに注ぐあたたかい眼差しがあることは疑いようもない。

(2)Warré Beekeeping
http://warre.biobees.com/

→ エンコードを「西欧(Windows-1252)」とすると文字化けしない

無題
Abbé Émile Warré

当方がWarre式養蜂を知ったのはこのサイトからだった。このサイトをいちから読み進めればおのずとここに示す資料は見つかるのだが、そこから派生した資料もあり、自分自身のメモとしても出典を示しておこうと思った。

このサイトは、Warre式養蜂についてのほぼすべての実践知識を網羅している。そして、このサイトが『バイブル』として根拠となるページを明記しているのが、前記の(1)だ。

当方のようなWarre入門者には、次のページがたいへん参考になる。

「養蜂初心者へのアドバイス」
 http://warre.biobees.com/beginner.htm

(3) David Heaf関連資料

David Heaf(発音は「デビット・ヘフ」か)は、イギリスはウエールズ在住の養蜂家で、Warre式をベースに持続可能な養蜂を目指している。当方のかってな判断だが、状況的に(1)のサイトの運営に深く関わっているのではないかと思っている。ちなみに、『Beekeeping for All』英語版の共同翻訳者でもある。

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David Heaf

●David Heaf's beekeeping pages

http://www.bee-friendly.co.uk/

ヘフ氏のホームページ。

●Towards Sustainable Beekeeping
http://www.dheaf.plus.com/warrebeekeeping/towards_sustainable_beekeeping.pdf

いささかオーバーに言えば、Warre式養蜂を持続可能な養蜂の具体化としてとらえ、生命倫理の観点から養蜂について彼の考えを述べている。駆動原理は、(1)生態系資源の消費(ecological footprint)、(2)労力の投資、(3)社会への悪影響、この3つを最小限に抑えつつ、いかに養蜂という営為を実現するかである。

あまり突き詰めると、息苦しくて「趣味の養蜂」として成立しなくなるが、養蜂の新しい装置や仕組みが出現したとき、それを導入すべきかどうかの有力な判断基準を与えてくれる。

とくに、巣箱の300 x 300 x 210mmのサイズの合理性を説明したPart2は一読に値する。

●How to build a Warré beehive at low cost by David Heaf - sustainable bee-keeping UK - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1KVn-NZTfus

ヘフ自身が動画でWarre式巣箱の安価な作り方を説明している。当方、英語の聞き取りはほとんどできないのだが、冒頭、のんびり自転車を漕いでいる彼の姿を見ると、そのままヘフの養蜂に対する考えが現れているようで楽しくなる。巣箱の図面なども見事なイラストで掲載されている。当方、製作中のWarre式巣箱で大いに参考にしている。

(4) Beekeeping: natural, simple and successful by Johann Thür, Beekeeper
http://www.naturalbeekeeping.com.au/Beekeeping%20-%20Natural,%20simple.pdf

ヘフがドイツ語から翻訳した資料で、自然に添った単純な養蜂こそが成功の秘訣であることを力説している。本書はヘフの持続的養蜂の考え方に大きな影響を与えたようだ。ヘフ自身もたびたび言及している「巣箱内の熱と匂いを保持することの重要性」は、本書の中心概念となっている。

そうした養蜂を実現するのが、200年前(1945年時点から)のドイツはナッサウの牧師Christの考案した巣箱であり、Thürがそれをベースに改良した巣箱である。この巣箱は、奇しくもWarre式のものとほぼ同じ断面内寸で、やはり8本の上桟を持っている。そして巣箱の熱と匂いを保持する点で、Warre式と共通しているのだ。

(5) At the Hive Entrance by H. STORCII
http://www.biobees.com/library/general_beekeeping/beekeeping_books_articles/At%20the%20Hive%20Entrance.pdf

巣箱の外から観察された事象とその意味の説明が、季節や重要な画期ごとに表形式に羅列してある。できる限りハチの生活を乱さないことを目指すWarre式にとって、巣箱を開けるのは蜂蜜の収穫時に1回だけというのが理想。外から眺めるだけでコロニーの健全さを確認する情報が得られれば願ってもない。ラ式の内検とは対照的に、巣箱を外から検査することを「外検」と呼ぶとすれば、本書は、外検の重要な手引きとなるはずだ。

無題

(6) Hive Diagnostics by Katherine and Ruth White
https://dl.dropboxusercontent.com/u/68486342/HiveDiagnosticsTalk1.pdf

前項の(5)に触発され、さらに新しい知見も取り入れて、巣箱の外検によってコロニーの状態を診断する指針をパワーポイント風の簡潔な箇条書きで示している。大項目は、「健康な巣箱のしるし」「問題のある巣箱のしるし」「分封のきざし」「病んでいる巣箱のしるし」など。説明があまりないので、これだけでは十分理解できないが、ざっくりと外検の大枠を提示してくれる。

以上

2016年1月6日水曜日

ミツバチの変態とバロア(ヘギイタダニ)を動画で

 ナショジオのサイトに、巣房内のミツバチの変態を撮した動画が載っていた。これがとてつもなく美しい。

さらに、その動画には生きたバロアが写っていた。特別出演とでもいうか、蛹に寄生して徘徊するところまで偶然に写っていたのだ。

Honeybee Metamorphosis
Author Melody Rowell

自然の状態では、変態の過程は巣房のなかで進行し、巣房には蓋が掛かっているから、見ることはできない。この撮影は、有蓋巣房内と同じ温度・湿度の孵化器に巣を入れて蓋を切り取って行われたという。動画といっても、高精度の写真を一コマずつ撮影したものを電子的に構成したらしい。

新しいビットマップ イメージ (2)コピー - 新しいビットマップ イメージ (2)
発色するの目巣房から出現する成虫

写真はいずれも上記ナショジオサイトより

 

2016年1月5日火曜日

2回目のシュウ酸処置

最初のシュウ酸処置(12/22日)に続き、1/3日に2回目のシュウ酸処置を行った。12日後に2回目の処置をしたことには理由があるが、長くなるのでまた別の機会に触れよう。前回シュウ酸の正確な計量に苦労したので、精度0.1gの新兵器を入手した。

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新兵器0.1gまで計量できる

処置の翌日(1/4)の外検(そんな用語があるのか知らないが、巣の外から検査するだけだからね)ではハチの死骸が73匹、バロア14匹だった。シュウ酸によるものはハチの死骸が新鮮だ。ふだんでもハチの死骸は20~30匹ほどあるが、ほとんどミイラ化している。このままではハチの被害のほうが大きいではないか。

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処置翌日 新しいハチが多い 死骸73匹 南無南無!

今日(1/5)の外検はハチ22匹、バロアは263匹という結果になった。

追記 2016/01/06
ハチ24匹、バロア95匹 シュウ酸のハチへの影響はなくなったが、バロアへの影響は残っている模様。ハチの新しい死骸はなかった。

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処置2日後 バロアの死骸 263匹(これは一部)

これは明らかにシュウ酸処置の効果だと考えてよかろう。翌日ハチの死骸が多く、翌々日にバロアの死骸が多かった。シュウ酸はハチには速効性で、ダニには緩効性なのか。

今回はダニの数が多すぎてカウントに自信はないし、カウントの途中で風に吹き飛ばされるものもあったが、目安にはなるだろう。ちなみに、バロアはふだんでも自然に巣から脱落するが、その数が24~48時間に50匹を超えると早急な処置が必要とされている(http://extension.entm.purdue.edu/publications/E-201.pdf 「Sticky board test」)。

ダニのカウントは巣門と斜路、それに巣門と斜路の間に白紙を置き、そこへ落ちたものを数え、ハチについては巣門と斜路、それに巣門前の地面のほぼ1m四方にあるものを数えた。カウント後はハチもダニも清掃している。

それと1/4日の観察では、生きているバロアが斜路を歩いているのを発見。自ら巣を出ることはないだろうから、巣門から出たハチに振るい落とされたのか、衰弱して脱落したのか。ハチがバロアを振るい落とす動作は実際に見ている(「バロア(ヘギイタダニ)がいた!!!」の「追記」)が、そのときダニはすでに死んでいた。また、バロアをくわえて飛び立つハチも観察できた。巣門と斜路の間に多数のダニの死骸が落ちていることからしても、バロアはハチによって巣の外へ運び出されているわけで、ハチはバロアを異物あるいはゴミとして排除しているように見える。

とくに、バロアをくわえて飛び立つハチがいたことに興味を覚える。バロアは本来トウヨウミツバチを宿主としているのでトウヨウミツバチには耐性があるが、セイヨウミツバチにはない。その理由のひとつとして、トウヨウミツバチはグルーミングや噛みつきでバロアを排除できるが、セイヨウミツバチにはその習性がないとされていた(Purdueの同上PDF「Life cycle」)。しかし、くわえて飛び立つということは、噛みつきに近い動作で、新たな習性の芽生えが感じられる。セイヨウミツバチがバロアへの耐性を獲得する道が開けていると見ることはできないだろうか。