2016年1月28日木曜日

シュウ酸溶液の濃度と処置量

シュウ酸滴下によりバロア対策を行う場合、シュウ酸溶液の濃度と処置量をどう決めるか、これまで調べたことをメモしておく。濃度の計算については、「シュウ酸溶液の濃度計算」参照。

処置する濃度は?

ScientificBeekeeping.comのシュウ酸処置表(仮にオリバー表)では、低、中、高(2.5%、3.2%、4.2%)の3レベルの濃度(V:W)について使用するシュウ酸二水和物、砂糖、水の量を示している。米国以外のサイトを見てもだいたいこのくらいの濃度を使用しているようだ。

検索にかかっためぼしいサイトを挙げてみる。

下記の2サイトでは、濃度3.2%のシュウ酸溶液(シュウ酸二水和物75g、水1000ml、砂糖1000g)を使用している。

●ニュージーランド
http://www.biosecurity.govt.nz/files/pests/varroa/control-of-varroa-guide.pdf
��農業・林業省『CONTROL OF VARROA A Guide for New Zealand Beekeepers』)

●アイルランド
http://www.dave-cushman.net/bee/wallyshaw.html
��故人デビッド・クッシュマン氏の個人サイトだがミツバチの情報を百科事典的に網羅している)

次のサイトは、濃度は明示していないが、シュウ酸二水和物35g、水1000ml、砂糖1000gという慎重な値を推奨している。

●IBRA(1999年にスイスで行われた試験に基づいて中央ヨーロッパの温暖な地域と限定)
http://www.dargbees.org.uk/Oxalic%20Charriere_Bee%20World.pdf
��IBRAという国際的なハチの研究団体の資料)

とりあえずここでは、濃度3.2%(V:W)を使用することとして話を進める。

処置する量は?

処置量はハチの数で決まると考えるのが自然だろう。オリバー氏に限らず多くの場合、1シーム当たりに滴下する量とシーム数によって使用するシュウ酸溶液の量を決めている。シームは巣枠と巣枠のあいだの空間の意味だ。そこにいるハチの数が問題なのだから、巣箱に接する両端を合わせて1シーム分のハチがいると考えれば、巣箱のシーム数は巣枠数とほぼ同じと見なすことができる。

当然、処置するときは、ほとんどのハチが巣内にいることを想定しているはずだ。シュウ酸処置は、冬季のハチの不活発な期間に行われることが最適なので、この条件はおのずと満たされていることになるか。

また、シームといっても巣箱のサイズや構造で、シームにいるハチの数も変わる。多くの資料ではラングストロース式巣箱の巣枠を前提としているが、資料を読むときは巣箱の条件もチェックする必要があるだろう。

オリバー表は特に明記していないが、状況的にラングストロース式巣箱を使用しているので、それを前提として1シーム当たりの処置量を5mlとしている。(ScientificBeekeeping.comでも古いページには3~5mlとしているカ所もある)

 処置に必要なシュウ酸溶液 = 巣枠数*5ml

シュウ酸溶液の作り方

ここでシュウ酸溶液とは、重量比1:1の砂糖と水の溶液にシュウ酸を溶かしたものだが、手順としては、水(湯)にシュウ酸を溶かしてから、砂糖を溶かしたほうが作りやすい。

シュウ酸溶液の濃度は3.2%(W:V)とする。 ただし、W(g)、V(ml)

シュウ酸重量 = シュウ酸濃度*水の体積*(1.62/71.4) = 3.2*水の体積*(1.62/71.4)

上の式で、「水の体積*1.62」は「処置に必要なシュウ酸溶液の体積」になるから、使用するシュウ酸の重量は下式で計算できる。

 シュウ酸重量 = (3.2*処置に必要なシュウ酸溶液の体積)/71.4

例 ラ式巣箱に3.2%のシュウ酸溶液を処置する場合

日本ではラ式の巣箱はほとんど9枠で運用しているから、1箱に使用する溶液の量は 9*5 = 45ml となる。 

水の量 45/1.62 = 27.8ml

シュウ酸量 = (3.2*45)/71.4 = 2.02g

これで、水、砂糖、シュウ酸の量が決まった。

いま使っている注射器では27.8gをきっちり吸い上げるのは無理なので28mlほどとする。砂糖もどうように28gほど。シュウ酸の量は微妙だが、0.1gまで量れる秤なら2.0gでよいだろう。

(1)ガラス容器を60℃くらいに湯煎しておく。(前回はステンレスのボールを使ったがシュウ酸と反応するらしくシミが残ったので止めた。)
(2)湯煎の湯を流用し、注射器で28mlほど吸い上げてガラス容器に移す。
(3)ガラス容器に2gのシュウ酸を入れて溶かす。
(4)シュウ酸が溶けたところでさらに28gほどの砂糖を入れて溶かす。
(5)最後にガラス容器の溶液を注射器で吸い上げると、ほぼ45mlのシュウ酸溶液で注射器が満たされる。
(6)シュウ酸溶液の入った注射器は保温のため湯に入れたガラス容器の中に置いたまま巣箱に運び、手で触れても熱くない温度で投与する。

巣箱の多い場合は、巣箱数分の溶液を一度に作っておき、注射器で計りながら滴下することになるだろうね。

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