2016年7月6日水曜日

巣枠の寸法

これまでラ式・ホ式やWarreなど、既存の方式を踏襲して巣箱や巣枠を作ってきたが、どうもわれながら方針がすっきりしない。



 



そこで、どういう基準で巣枠の寸法、とくにその上桟(トップ・バー)の幅と設置間隔を決めればいいのか調べてみた。


D. Cushman氏のサイトから拝借した 次図のように巣枠を表すと、巣枠の上部形状が配置を自動的に決めることになるので、設置間隔はSpacingと同じ値になる。(図はホ式巣枠を抽象化したものだろう



 

キャプチャ 

The Langstroth Bee Hive





●原則 ハチが自然に作る巣の巣板の幅と間隔を重視すること。



 



上の原則に従ってあれこれ検索していると、次のサイトに遭遇した。



 



The Practical Beekeeper



 The Practical Beekeeper



このサイトはまさに「原則」に即した養蜂を目指していて、ドンピシャのテーマ「FrameWidth」を取り上げているページがあった。



 



サイトの作者・養蜂家のMichael Bush氏の蘊蓄を反映してこのサイトは歴史的な養蜂家の記した文献の引用に満ちているが、そこはひとまずおいて、当方のきわめて恣意的な解釈で主旨をコピペさせてもらう。



 



ただし、ここでFrame
Width
といっているのは、巣枠の上桟の幅という意味よりはむしろ巣板の間隔、つまり隣接する巣枠(の上桟)の中心線と中心線の距離のことである。



 



(1)巣房の用途によってハチは巣板の間隔を変える。



 



働きバチの飼育巣房 1-1/4"(32mm)



雄バチの飼育巣房  1-3/8"(35mm)



貯蜜巣房      1-1/2"~(38mm~



 



(2)自然に作った巣板の間隔(隣接する巣板の中心線の距離)は、狭いと1 1/8" (30mm)くらいだが、平均的には1-1/4 (32mm)になっている。



 



以上からハチは働きバチの飼育巣房を優先して巣板を構築していると理解することができる。



 



なぜハチは1-1/4
(32mm)
を採ったか



 



ハチがコロニーを維持するために重要なことは多数の働きバチを育てることだから、それは当然の成りゆきだろう。飼育で重要なポイントは巣房の温度を35℃に維持することだ。そのためには巣枠の間隔は狭いほうが有利だが、あまり狭くては作業がしにくくなる。その妥協点が1-1/4 (32mm)なのだろう。さらにそれ以上間隔が開くとハチは2重に被さって巣房を温めるようになる。その結果1重で温める場合に比べると、巣房の面倒をみるハチの数は倍増し、維持できる飼育巣房の数は半減する。



 



一方、1-1/4
(32mm)
では雄バチは育てられないかというと、そんなことはない。隣接する両方の巣板が雄バチの飼育巣房で満たされればハチが背中と背中合わせて同時に作業するには苦しいが、どちらかの巣枠に限れば可能だ。雄バチをむやみに増やす必要もない。貯蜜についても同様なことはいえる。


ここに人の事情を差し挟んでみると、貯蜜に最適化したければ、隔王板を使って継箱を載せ、育児巣房の存在しない巣箱で巣枠間隔を広くすればいい。日本の養蜂で13mmの三角コマを使って巣枠間隔を広げるのはまさにその意図がうかがえる。

しかし、隔王板の効果については異論もある。まる井養蜂場のブログHoney Bee Stationの記事に何度も登場するように、隔王板(まる井氏は「格王板」としている)は反って蜂蜜の収穫を減らしているという。継箱をするときは、隔王板は入れず、下段にある蜂児圏を継箱へ移動するのだ。Warreの場合は自然の巣の成長に習って下に継箱をするが、まる井式は上へ継ぐ従来の方式を踏襲しながら自然な巣の成長を模しているとも理解できる。





だだし、これだけでは巣枠の上桟の幅を決めるデータに欠ける。それには、次の資料がある。



 



(3)巣房のサイズ(直径)と巣板の厚みとの関係



 



巣房のサイズ 巣板の厚み



5.555 mm  22.60 mm



5.375 mm  22.20 mm



5.210 mm  21.80 mm



5.060 mm  21.40 mm



4.925 mm  21.00 mm



4.805 mm  20.60 mm



4.700 mm  20.20 mm



 



巣板の厚みが上桟と接着する根元でも同じだとすれば、上桟は最大の巣の厚みを許容するために少なくとも23mmの幅が必要となる。


追記:吉田忠晴『ニホンミツバチの飼育法と生態』によれば、セイヨウミツバチの働きバチの巣房サイズは5.1mmだから22mmでもよいか。



 



手元で計れる日本製のラ式・ホ式の巣枠の上桟を計ってみると26.5mm。また、Wikiの「Langstroth hive」の説明によれば、巣枠の幅は29mmとなっている。どうやら巣枠の幅はハチの生理からというより、巣枠の強度や操作性への配慮から決まっているようだ。



 



結論



セイヨウミツバチの巣枠は、巣板の基部が接着するために最低23mmの幅が必要で、飼育巣房を優先し熱の発散を防ぐ観点から32mm間隔で配置することが適当である。



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