2018年10月5日金曜日

今年も採蜜ならず

10月2日、コナラ群の採蜜を試みたが、残念な結果に終わった。
重箱式の採蜜は巣箱単位で行い、採蜜する巣箱の巣脾をすべて取出して、結果的に壊してしまう。またミツに雑物が混じらないように、同じ巣箱の中に卵、幼虫、花粉などの巣房が混ざらないようにする必要がある。
重箱式の採蜜の目安は、上から4段目まで巣脾が伸びて、3段目までが充実していることで、そうなれば1段目の採蜜が可能となる。ミツバチの巣は上から下へ成長してゆくが、ハチたちは貯蜜は巣の上部で、育児は下部で行い、育児に必要な花粉房は育児房の周辺に配置する。4段目まで巣脾が伸びるころには、花粉房や育児房は下へ移り、最上段は貯蜜房だけになっているという判断だ。PJの蜂場から引っ越してきて越冬し、ひと夏をやりすごしたコナラ群は巣門段を除くと4段あり、その条件を満たす。


巣脾の構成

上桟を取出し見台に置いたところ。斜め上からで見にくいが、上部帯状の有蓋巣房が貯蜜房、下部の有蓋巣房が幼虫がすでに蛹になっているもの。点在する開いた巣房に、花粉(おもに上部)、卵、蜂児など入っている。貯蜜が進むと全面が有蓋の貯蜜房となり、育児エリアは下段の巣脾へ移る。

はじめての採蜜だから、まえもってあれこれ段取りを考えて必要な道具を揃え当日にのぞんだ。

 
道具を揃え                     スノコを外す

細いステンレスのワイヤーの両端に取手を付けた道具で、スノコと巣箱の癒着を切り離す。スノコを外してみると現れたのはスカスカの巣脾だった。ミツはまったく見当たらない。普通なら、切り離した断面にミツが光り、巣板と巣板はもっと密に櫛比しているはずだ。

 
1段目 スカスカ

巣箱の縁をコツコツと叩いて、1段目に残るハチを下段へ退去させ、1段目と2段目を切り離す。2段めはわずかに黒っぽいミツが見えるが、荒廃の気配は覆いようもない。

2段目 黒い部分わずかにミツが見える

これでは採蜜など望むべくもないが、少なくとも1段目は外さないとスムシが跋扈することは目に見えている。1段目を外して蓋付きの大きなポリバケツに収容。2段目以下をもとの状況へ復した。

この惨状の原因はなんだ。反射的に思い浮かぶのは逃去か夏分封か。様子を見るために巣内を撮影した。

1段を外した直後の巣内

おもえば猛暑にめげてここひと月ほど巣の内部は写していなかった。たしかに前回撮影した巣内に比べるとハチの数は大幅に減っている。しかし、巣箱を叩いてみるとシマリングの反応はあり、数は少ないが花粉を搬入するハチもいる。これだけハチが残っていれば逃去ではない。では、夏分封か。それなら、上の写真くらい巣脾の底が写っていれば、新女王が羽化した王台の跡がみえるはず。いったい何だ?

失望と戸惑いにめげながら、ポリバケツを作業場へ移動して、巣箱から切り離した巣脾がこれである(写真下)。

1段目から切り離した巣脾

ミツロウを採ることはできても、ミツは採蜜の手間が惜しまれるくらいか。

気分を落ち着けてプロジェクトのリーダーに状況をメールしてみた。彼の診断は、この夏の猛暑による餌不足だろうという。巣の惨状に動揺して、逃去か夏分封かまでは疑ったが、餌不足には思い至らなかった。ハチの行動が正常に見えるし、最上段の空っぽの巣脾を取出してもほとんどスムシに侵された様子はない。リーダーが立ち会った最近の採蜜で同じような状況があったという。ハチ仲間とメールでやり取りすると、そちらでもスカスカの巣があったとのこと。どうやら餌不足と考えるのが自然だし、こちらの気分も楽になる。カキノキ群やヤマザクラ群も実質2段くらいしか成長しなかったのもうなづける。

さっそく、夕方に砂糖水を給餌した。その翌日、様子を見に行くと、こんな具合だった。

給餌器にハチ鎖が垂れている
もう給餌器に砂糖水はないが

1段減って充実した蜂球

巣門段の扉を開けると給餌器にハチ鎖が垂れていた。ハチたちは自分たちの通路を確保するために臨機応変にハチ鎖を組む。新しく巣脾を中空に延ばすときもそうだし、巣の位置が巣門から遠くなってしまったときもそうだ。前者は足場を作るためだし、後者は、おそらく板の面を歩くよりハチ鎖のほうが楽なのだろう。この場合は、給餌器のミツを吸い上げて巣脾へ運ぶために利用している。

群自体は健全そうだから、適当に給餌してやれば無事に越冬できそうだ。カキノキ群やヤマザクラ群は今年スタートした群だから採蜜する予定はない。つまり、養蜂3年にしていまだ採蜜ならずである。